コンパクト差分
テキスト「空力音の直接数値計算を支える技術」(暗黙の型宣言著)の補足課題2
4章まで読んだらやってみよう!
課題
(1) コンパクト差分を用いて正弦波の1階微分を計算するプログラムを作成する.
※誤差も計算して,実効的な精度を確認する.
※連立方程式はLU分解(Crout法)を用いる.
※テキストの以下プログラム参照.
- List3.2(コンパクト差分main)
- List3.4(1階微分に対するコンパクト差分用module)
- List4.2(3重対角行列定義)
- List4.3(LU分解)
(2) 同様に,2階微分を計算するプログラムを作成する.
※テキストのList3.11(2階微分に対するコンパクト差分用module)参照.
解答例
まずは1階微分.テキストを写経して,以下3つのファイルを作成する.
- main.f90(List3.2参照)
- module_CompactScheme.f90(List3.4参照)
- TypeTriDiagonalMatrix.f90(List4.2参照)
コードに以下を追加する.
List4.2(module TypeTriDiagonalMatrix)の「ここに解法のサブルーチンを書く」に,List4.3(subroutine decompose, solve)を追加.
List3.2(program main)の「ここで誤差を計算する」に以下を追加.
※厳密解cos(x)に対する最小平均誤差を計算している.
CmpError : block integer :: i real(8) :: x, err err = 0d0 do i=1,Nx x = dble(i-1)*dx err = err + abs(f%dx(i)-cos(x)) !print * , f%dx(i) end do print * , "MinAveError:", err/Nx end block CmpError
以上で1階微分計算用プログラムは完成.
動作確認のため,上記コードでコメントアウトしたprint分をコメントインしてみて,正しく1階微分が計算できているか確認してみる.
図1は,Nx=8 の場合の計算結果(マーカー)と厳密解(実線)をあらわしている.計算結果は厳密解とほぼ一致しており,正しく計算できていることが確認できる.
格子分割数(Nx)やスキーム(Interior1st, Boundary1st, NearBdry1st)を変えて,誤差の変化を確認してみる.
例えば,
- グローバルスキーム・・・6次精度
- 境界1点内側・・・5次精度
- 境界・・・4次精度片側差分
を用いた場合の,格子間隔Δxと誤差は,図2のC6N5B4T1のとおり.
これに近似直線を引くと,実質的な誤差は4.9178なので,約5次精度であることがわかる.
境界1点内側を4次精度(C6N4B4T1)にしてみても,精度はほとんど変わらない.
グローバルスキームは6次精度だが,境界が4次もしくは5次精度なので,全体としては約5次精度に落ちる.
次に2階微分.プログラムの修正箇所は以下.
- module_CompactScheme.f90にList3.11のソースを追加.
- main.f90で呼び出すモジュールを2階微分用のモジュールに変更.
call construct2ndDerivativeMatrix(G) call construct2ndDerivativeVector(f%dx, f%var, dx, G)
- main.f90の誤差計算ブロック内の厳密解を-sin(x)に変更.
err = err + abs(f%dx(i)-(-sin(x)))
以下のスキームを用いた場合の誤差は図3のとおり.実質,約4次精度.
- グローバルスキーム・・・6次精度
- 境界1点内側・・・4次精度
- 境界・・・3次精度片側差分
陽的差分法
テキスト「空力音の直接数値計算を支える技術」(暗黙の型宣言著)の補足課題を作ってみました.
さっそく第一回目の課題.
テキスト3.3まで読んだらやってみよう!
課題
2次,4次精度中心差分法の誤差を計算する.
ヒント:
テキストList3.1のプログラムに誤差計算のコードを追加する.
格子点数を増やした時の誤差の減り方が,テキスト図3.11に示されているように, 2次精度はslope2,4次精度はslope4にほぼ沿うことを確認する.
解答例
テキストList3.1の「!ここで誤差を計算する」に以下を追加.
CmpError : block integer :: i real(8) :: x, err err = 0d0 do i=1,N x = dble(i-1)*dx err = err + abs(f%dx(i)-cos(x)) end do print * , "MinAveError:", err/N end block CmpError
格子点数Nを8から1024まで変化させた場合の2次精度中心差分の最小平均誤差は,表1のE2-MinAveErrのとおり.
N | Δx | E2-MinAveErr | E4-MinAveErr |
---|---|---|---|
8 | 0.785398 | 0.060164 | 0.007113 |
32 | 0.19635 | 0.00407 | 3.13E-05 |
128 | 0.049087 | 0.000256 | 1.23E-07 |
512 | 0.012272 | 1.6E-05 | 4.81E-10 |
1024 | 0.006136 | 3.99E-06 | 3.01E-11 |
これをグラフにすると,
E2-MinAveErrの近似曲線を引くと,であり,ほぼ2次精度(正確には1.9878精度)であることが確認できる.
slope2のグラフは,のグラフを引けばOK.(aは任意.0.5くらいにしておくと近似曲線と重ならなくて見やすい.)
FiniteDifferenceのブロックを4次精度に書き換える.
FiniteDifference : block integer :: ip1,i,im1,ip2,im2 do i=1,N ip1 = modulo((i+1)-1,N)+1 im1 = modulo((i-1)-1,N)+1 ip2 = modulo((i+2)-1,N)+1 im2 = modulo((i-2)-1,N)+1 f%dx(i) = (-f%var(ip2) + 8*f%var(ip1) -8*f%var(im1) + f%var(im2))/(12.d0*dx) end do end block FiniteDifference
4次精度中心差分式はテキスト式3.18参照.
誤差を計算すると,表1のE4-MinAveErrのとおり.近似曲線はなのでほぼ4次精度.
Tips
- 周期境界条件ではmoduloを使うと便利
周期境界条件というと,普通はif文を使って境界での参照点を設定するけれど, 本テキストではmoduloをうまく使ってif文をいちいち書かなくて済むようにしている.
modulo((i+s)-1,N)のsは,いくつ先の格子なのかというのをあらわしている. プログラムを見やすくするためにsを明記している.
ちなみにmodulo((i+s)-1,N)+1なんてしないで,このほうが簡単でしょ?と思いつつ,
ip1 = modulo(i+1,N) im1 = modulo(i-1,N)
と書き換えて,ip1とim1を出力させてみると・・・ ※簡単のためN = 8
N | ip1 | im1 |
---|---|---|
0 | 1 | 2 |
1 | 2 | 3 |
2 | 3 | 4 |
3 | 4 | 5 |
4 | 5 | 6 |
5 | 6 | 7 |
6 | 7 | 0 |
7 | 8 | 1 |
im1=0が配列外参照になってしまう.(fortran配列はデフォルトで1はじまり)
これを防ぐために,modulo内で-1して,あとから+1している.
- 誤差は格子点数Nで平均化する!
前述のCmpErrorでerr/Nとせず,単にerrだけにしてしまうと,格子全体での累積誤差になる.
格子点数を増やすほど誤差も多く足されるので,誤差は減らない.これはテキストの「ノルム」のl1ノルムで述べられているとおり.